- フリーランスを考えている理学療法士
- 将来的に開業を考えている理学療法士
- フリーランスのメリット・デメリットを知りたい
ある程度理学療法士として働いていると、「独立」や「開業」、「フリーランス」といったワードを耳にしたことはありませんか?
理学療法士として自由に働けて、収入が得られるとしたら魅力的なのは間違いないです。
ただ実際はどうなのかというと、疑問に思うところも多いはず。
この記事では、実際の働き方やメリット・デメリットからフリーランスの理学療法士について解説します。
理学療法士10年目の筆者の視点から解説していきます
ステテコ
- 30代理学療法士(転職2回、急性期病院勤務)
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フリーランスの理学療法士とは?
フリーランスの理学療法士は存在しない!
フリーランスとは「会社や企業に属さず、個人で仕事を請け負う」ことを意味します。
大前提として法律上、理学療法士は医師の指示の下で職務を行わなければなりません。
そのため、「フリーランスの理学療法士」という言葉は本来適切ではありません。
ここではフリーランスの理学療法士を「理学療法士の経験を活かしてフリーランスとして働く」と定義して解説します。
医師がいないと理学療法士は成り立たないのですからね
どんな働き方がある?
働き方の一例としては以下の通りです。
- 整体院やサロンの経営
- トレーナー活動
- セミナー講師
- コンサルティング
臨床で身につけた知識や技術をもとに独立することが多く、特に多くの割合を占めるのが整体院やサロンでの自費診療になります。
理学療法士では病院や施設で働くことが一般的ですが、柔道整復師やトレーナーなどの職域まで踏み込みつつあります。
最近では管理職や経営の経験を活かしてコンサルティングを行う人も増えてきています
フリーランスの理学療法士ってどうなの?
筆者個人の意見として、フリーランスの理学療法士はオススメしません。
主な理由としては以下の3つになります。
1人馬力でフル稼働してやっと成り立つ
仮に整体院やサロンの運営を想定した場合ですが…
- 1人あたりの単価5,000円(3,000〜8,000円が相場)
- 1日10人を治療
- 事務作業や治療業務全般を兼任
この時の利益は50,000円となり、諸経費で半分ほど引かれたとすると約25,000円/日になります。
理学療法士の平均年収は432万円のため1ヶ月あたり約29万円(432万円÷12×0.8)を売り上げなければ同等額になりません。
人数でいうと月に約120人程度の顧客が必要となる計算です。
顧客数を増やしたり、単価を上げればより高収入が期待できますが、そのためには継続的な経営力が求められます。
このペースを1年間継続するのはなかなか難しい
レッドオーシャンであり廃業率も高い
理学療法士のフリーランスのほとんどが整体院やサロンの開業です。
下記の表は厚生労働省が公表している令和4年の「あん摩、マッサージおよび指圧を行う施術所等数」になります。
施術所名 | 施術所件数 |
あん摩、マッサージおよび指圧を行う施術所 | 18,155 |
鍼および灸を行う施術所 | 33,986 |
あん摩、マッサージおよび指圧、鍼ならびに灸を行う施術所 | 38,589 |
その他の施術所 | 2,660 |
柔道整復の施術所 | 50,919 |
上記合計 | 144,309 |
類似する職種だけで全国のコンビニの店舗数のおよそ3倍あるということになります。
また、中小企業庁の「中小企業・小規模事業者の現状」によると小規模事業所の約80%が5年以内に廃業するというデータがあります。
筆者の周りでも開業した理学療法士はいましたが、ほとんどが閉店に追い込まれているのが現状です。
競合数が多いうえに、廃業率が高いというのは安定とは程遠い…
メリットよりも圧倒的なデメリット
私見にはなりますが、フリーランスになるメリットよりもデメリットが大きいことも理由の1つです。
詳細を後述していきます
フリーランスで働くメリット
時間の使い方を自由に決められる
フリーランスで働く最大のメリットはスケジューリング次第で働き方を調節できることです。
好きなときに働き、好きなときに自由なことができる。
年収の問題をクリアできるのであれば、フリーランスでの働き方は得策といえるでしょう。
自身の強みを活かせる
今まで培ってきた専門性を活かすことで他との差別化を図ることができます。
より専門的な分野であればフリーランスで働くうえでの大きな武器になります。
人間関係に悩まなくてすむ
会社員ではそりが合わない人もいたり、苦手な人とも顔を合わせなくてはなりません。
以前よりは減りつつありますが、PT界隈も年功序列やパワハラ体質が強く残る職場も存在します。
フリーランスではそのような心配も少なくなるため精神的な負担を減らすことができます。
高収入が期待できる
フリーランスの理学療法士で印象が強いのは治療院の開業ですが、働き方は1つではありません。
例えば、コンサルティング事業は単価設定金額が高い傾向にあります。
治療院の開業も金額設定や顧客数、サービス内容次第で高収入が期待できます。
フリーランスで働くデメリット
収入が安定しない
収入に上限がない反面、得られる収入にも幅があります。
コロナ禍のような社会背景の変化や自身の体調不良など収入にも大きく影響が出ます。
毎月一定額を支給される会社員と違い、替えがきくわけではないため収入は安定しない可能性があります。
自身で顧客を見つけなければならない
今までは医師指示の下、患者や利用者に対して理学療法を提供していました。
しかし、フリーランスでは顧客を自身で見つけなければなりません。
安定した収益の確保のために、集客やブランディングに力を入れることが必要になります。
社会保障の制度内容が変わる
会社員では労災や病気の際には傷病手当を貰えていましたが、フリーランスでは個人事業主になるため、その枠組みから外れてしまいます。
また、所属先が負担していた社会保険料も全額支払わなければなりません。
年金制度は厚生年金から国民年金に変わるため将来の年金受給額にも影響が出ます。
事務仕事もしなければならない
臨床現場では治療業務やカルテ作成などが中心でしたが、確定申告を含めた事務作業を行わなければなりません。
税理士を雇わない場合、所得や雑費などの税金の計算や帳簿付けなどが必要です。
本業とは別に時間をとられるため、本業が疎かになる可能性があります。
社会的信用度が低くなる
会社員と違い、開業では収入が安定しないため社会的信用度が低くなります
ローンやカードの発行など信用が関わる部分ではマイナスとなります。
今後のライフプランで影響が出る場合は慎重に考えるようにしましょう。
フリーランスで働く前に考えてもらいたいこと
メリットでも述べた通り、上手くいけば自由な働き方や高収入も期待できます。
ただし、リスクも相応にあるため、なぜフリーランスで働きたいかを考えることが重要です。
目的によってはフリーランスで働き方以外にも代わりの方法をみつけられます。
高収入を目指したい?自分のペースで働きたい?
高収入を目指すならまずは転職
言わずもがな、フリーランスではすぐに高収入が期待できるわけではありません。
むしろ前述の廃業率を考えると圧倒的にリスクの方が大きいです。
そのため、高収入が目的であれば、まずは転職が一番の近道になります。
フリーランスで働くよりも圧倒的にローリスクです
隙間時間から始めてみよう
どうしてもフリーランスを検討している場合は、隙間時間を利用しての休日開業として始めてみましょう。
実際にやってみることでフリーランスの働き方が自分に合っているのかがわかるはずです。
隙間時間を工夫してできる副業もあるため、フリーランスの理学療法士に固執しすぎないことも重要です。
冷静な判断をしていきましょう
まとめ:フリーランスの働き方を理解したうえで判断しよう!
- 収入のハードルや廃業率の高さを知っておく必要がある
- 基本的にはメリットよりもデメリットが大きい
- 目的によっては転職や隙間時間での副業がおすすめ
フリーランスでの理学療法士の働き方は魅力も大きいですが、理想と現実も考えなければなりません。
いくら治療技術やアウトプットできる知識があっても集客能力がなければ生き残っていけません。
なんのためにフリーランスとしての働き方を目指すのかを今一度考えて行動しましょう。
特に家族を持ちの方には冷静に判断してもらいたいです!